『香川の「船の体育館」再生へ。未来へ繋ぐ10年の挑戦』

河西 範幸(かわにしのりゆき)

大阪芸術大学 建築学科 2000年卒業

大阪芸術大学建築学科を卒業後、同大学で2年間副手として教育・研究 支援に従事。その後、大阪の設計事務所で実務 経験を積み、地元である香川県の工務店 へ 。2008年 に独立し、自身の設計事務所を開設。建築設計の傍ら、2014年7月より丹下健三氏設計の旧香川県立体育 館の保存活動を開始。「一般社団法人船 の体育館再生の会」の代表理事として、 建築文化の継承に情熱を注いでいる。


丹下健三氏が設計した旧香川県立体育館(船の体育館)

『 香川の「 船の体育館 」再生へ 。 未来へ繋ぐ10年の挑戦 』

大阪芸術大学ご出身の皆様、建築学科 OB の河西範幸です。香川県高松市にある丹下健三氏設計の「旧香川県立体育館」(船の体育館)をご存知でしょうか。船の形をした独創的な名建築ですが、2014年に改修が断念され、現在は解体の危機に直面 しています。

私は「建築文化を失ってはならない」との思いで、2014年7月から保存活動を開始しました。建物の魅力を多くの人に知っても らうため、写真記録、HP公開、清掃活動、 写真展、「まち歩き」ツアーなどを企画・実 行し、現在に至るまで地道な啓蒙活動を続
けています。
活動は単なる保存要望だけではなく、建設 ガイドツアーの様子 当時の関係者を探し出してインタビューを行い、構造の専門家とも議論を重ねました。その成果をもとに、具体的な改修提案や、難解とされる構造の解説資料を作成・発信し、建物の価値と再生の可能性を訴え続けました。
こうした活動は、SNSや多くのマスコミ報 道を通じて、次第に全国的な活動へと認知 旧香川県立体育館再生委員会 されていきました。国際的な建築保存組織 記者会見の様子 からも注目され、活動を通じて建築業界の第一線で活躍される多くの方々と出会い、議論を深める機会に恵まれました。今振り返ると、この活動の原動力は、大阪芸術大学での学びであったように思います。 先生方や同期たちと徹夜で議論し、一つの作品を作り上げた経験。そして、建築学科の副手として行政を巻き込んだ課題を設定し、運営した経験。あの頃培った「人を 巻き込む力」と「諦めない姿勢」が、10年以上にわたる活動の礎となっています。 現在、船の体育館の保存再生運動は新たなステージを迎え 2025 年からは「旧香川 県立体育館再生委員会」(委員長 長田慶太氏)へと活動が引き継がれ、私たちが積 み重ねてきた知見が活かされ、今、日本全体からその再生の行方が注目されています。芸大での学びが、時を経て故郷の文化を守り、未来へ繋ぐ活動に結実していることを、実感しています。