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越境するデザイナー 常識を覆す表現の根底にある一貫した発想とは 青空株式会社 代表 大阪芸術大学デザイン学科 教授 清水柾行

今年度から大阪芸術大学デザイン学科の教授に就任された清水柾行さん。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の地域委員長の他、大阪市の特別参与など多方面で活躍されています。そんな清水さんに、ご自身のデザインに対する考え方や仕事との向き合い方について伺いました。

すべてはデザイン

本日はお忙しいなか、お時間をいただきましてありがとうございます。
早速ですが、清水さんのこれまでのお仕事を拝見させていただくと、デザインの領域をはるかに超えているという印象を受けるのですが。

そうですね、デザイン業界でも特異な存在と見られているかもしれません。「お前はいったい何屋なんや」とよく訊かれます(笑)。でも、わたし自身は一貫してデザインをやっているつもりです。「すべてはデザイン」という考え方でデザインプロジェクトを実践しています。

清水さんにとってのデザインというのは?

まず、デザイン自体が目的ではない、ということですね。
人を幸せにしたり、楽しくしたりする、あるいは、物やサービスを使いやすくしたり、と、そのプロジェクトごとに目的があって、それを達成するために色々と考えていく。その過程がデザインです。結果として、いわゆるグラフィックデザインにとどまらない様々な表現になりますが、どれも根本にあるのは同じ。常に「何のためにするか」という問いであり、そのためのコミュニケーションを作る、というすごくシンプルなことなんです。


APEC奈良観光大臣会合レセプション インタラクティブ飛行船

コミュニケーションの設計

なるほど。具体的なお仕事に沿って、さらに詳しく教えてください。

奈良県の春日園地で開かれた21カ国の観光大臣会議の歓迎レセプションにおいて、飛行船を浮かべて灯火で照らすインタラクティブなインスタレーションを行いました。1300年にわたり奈良を照らし続けてきた「灯火」を奈良先端科学技術大学(NAIST)の持つ技術を使って表現しました。歴史と伝統に加えて、最先端の技術という奈良の二つの価値を組み合わせました。

完全にアートじゃないですか。これがデザインなんですか?

結果だけ見たらアートになっているかもしれませんが、成り立ちは、もうこれは完璧にデザインです。
飛行船を浮かべるのが目的ではないんです。このレセプションの目的は奈良の歴史的価値とNAISTのもつ技術と人材を各国にアピールするということ。その目的のために何をすべきか考えるところからスタートしました。
最初の時点では、奈良の作家のつくる燈火器を、各国の大臣へのお土産にするということしか決まっていませんでした。そこで、大量のパンフレットやDVDを配布するというよくあるPR手法ではなく、大臣自らの記憶に残る風景と体験をつくろうと思いました。そして自国に帰った後で、お土産の燈火器を一度でも使ってもらえれば、時間差をおいて奈良での体験が蘇るでしょう。そうすれば、奈良という都市を確実に記憶してもらえるんじゃないかと考えました。
奈良の魅力を印象づけるという目的があって、そのためのコミュニケーションを作る、これこそまさにデザインだと思います。


左から、東陰地正喜 企画広報委員、清水柾行 教授

仕事はつながっていく

そのような姿勢は学生時代からなんでしょうか?

いや、どうでしょう。決して真面目な学生ではなかったんですよ。そもそもが、なんとなくデザインでもやってみようかな、くらいの気持ちで学校に入りましたし。
授業では、先生の出す課題に対して、常に斜に見る癖があって、人と違うことばかりしてましたね。もちろん、何のためにやるのか、という目的を一貫して考え続けてはいましたが、先生の想定する方向とは必ず違う答えを出していました。今でこそ分かるのですが、先生には先生の狙いがあって、先生が想定している方向で考えた方が教育効果はあったと思うんですが(笑)

卒業後は?

そこそこ大きいデザイン事務所に就職したんですが、面白くなくて、後先考えずに2日で辞めました(笑)
その後、友だちと事務所を借りて開業しましたが、昼間は基本的に他のバイトをして、ときたま入る小さい仕事をしていくっていう感じでした。
ある時、新規開店するお店のシャッターに絵を描くという仕事が入りました。何を描こうか考えるために、まずそれを誰が見るのかを知らなければと思い、現地に行きました。開店してる時間帯ではなく、店が閉まってからの時間帯、この通りをどんな人が通って、シャッターの絵を見るんだろう、どんなふうに感じさせたらいいのだろうって、曜日によっても通る人が違うかもしれないので、一週間毎晩数時間、通りを挟んで、お店の前を観察し続けました。

やっぱり「何のために」とか「誰に向けて」という意識は徹底されているんですね。

当時、そのお店では内装工事をしていて、毎日夜になったらやって来る、わたしのことが話題になっていたらしいです。競合他社の偵察ちゃうか、とか(笑)。で、内装工事が終わって、いよいよシャッターに絵を描く段階になって、はじめて「君、毎日来とった子やんか、絵描きやったんか」って。やっとわたしの正体がわかったと同時に、「おもろい奴っちゃ」て思ってもらえたみたいで、その後その会社から仕事が入るようになって。

すごい、すごい。

なんか、そういう仕事とか人とか、ぜんぶつながっていくんですよ。
たとえば、JAGDAも、わたしは一般会員で、あまり積極的に関わっていなかったんですが、松井桂三先生のご紹介で委員をさせてもらうことになって、イベントや展覧会の企画に関わるようになりました。責任を背負い込むかたちで、色々たいへんだったんですが、そこで知り合った人に次の仕事を紹介していただいたり、学んだことが次の仕事に活かされたりと、すべてつながっていくんですよね。

答えは自分の中にしかない

なんかいい話がいっぱい聞けました。ありがとうございます。最後に、今年から大阪芸大の教授になられたということですが、学生さんに一番伝えようとしていることはなんですか?

内観をしなさい、ということですね。答えは自分の中にしかないんです。ついつい外に答えを探しがちなんですが、それは誰かが出した答えでしかない。他の人がどんなことを考えたのか、どんな表現を使っているのか、そこは勉強にはなりますよ。
でも、それだけでは、自分の仕事ができない。色んなことを吸収することも大事ですが、自分の中にあるものを見つめることがいちばん大事だと思うので。まあ、わたし自身そのことを自覚したのは40代以降でしたが(笑)でも、大切なことだから早いうちに気づいて意識してほしいんですよ。

最後までいい話!本当にわたし自身が勉強させてもらいました。今後のますますのご活躍を期待しています。
今日は本当にありがとうございました。

清水柾行(しみず まさゆき)プロフィール
青空株式会社 代表
大阪市生まれ。「すべてはデザイン」という考え方で横断的にデザインプロジェクトを実践する。APEC奈良観光大臣会合レセプション インラクティブデザイン、グランフロント大阪 ナレッジキャピタル V.Iデザイン、東北グランマのXmasオーナメント、ふくしまオーガニックコットンの復興プロジェクト等。CSデザイン賞大賞、NYADC特別賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞等受賞多数。
JAGDA運営委員・地域委員長、わたしのマチオモイ帖制作委員会、大阪市特別参与。
取材・フォト/
企画広報委員 東陰地正喜
企画広報委員長 田村 昭彦
@ _iimo TRICYCLE 三輪車のブランディング キッズデザイン賞受賞/ Harper's BAZAAR Junior Toy Awards 2016受賞(シンガポール) A _my home town わたしのマチオモイ帖 特別展(東京 KITTE 1F アトリウム) B _ グランフロント大阪 ナレッジキャピタル プロデュース室シニアディレクター(2012-2014)としてブランディング開発などに携わる C _ 世界グラフィックデザイン会議フェアー デザインデパートのサインデザイン CSデザイン賞大賞 D _ 月夜見 アロマソープのブランディング E _ ふくしまオーガニックコットンプロジェクトDESIGN

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編集>> 塚本学院校友会 企画広報委員会 発行人>> 福永亮碩