塚本学院 校友会誌 WINGS Web
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凸凹母校大阪芸術大学 活躍するOB・OG

人間とは何か?人間が人間としてできることは何か?という命題の答えの一つは「本当の音楽を奏することができる」ということではないでしょうか。そして私たち京都・バッハ・ゾリステンも、それを目指します。 福永 吉宏 (ふくなが よしひろ) 京都・バッハ・ゾリステン 主宰 指揮 京都フィグラールコール 主宰 指揮 1979年 大阪芸術大学演奏学科卒業(M5409)


「進化」水彩 2003 年作

大阪芸大の創成期、未完成の校舎が並ぶ時代、五期生で入学しました。
塚本学長は「大阪に芸術、文化を育成する学園を」との主旨を入学式で述べられたのを記憶しています。
60年代後半、学生運動真っ只中、学園閉鎖や、三島由紀夫の割腹自殺などもあり、学園は緊張に満ちていました。騒然とした時代の中、絵を描き続けることへの疑問が湧いてきたこともありましたが、広島県の田舎から出てきた学生にとって、がむしゃらに描くことだけが心の支えでした。アーチストへの通り道ともいえる、基本的具象絵画を描きながら、歴史的作家の踏襲学習に、将来への不安とともに、モチベーションを失いつつありました。
そうした中、フランスから帰国した泉茂先生に出会い、具象と抽象の分岐点の指導をいただき、1年に模索の中100点描くことから、抽象作家への道が開けてきました。
在学中に、信濃橋画廊で初個展を開催したことで、関西著名作家との交流も始まりました。
卒業後シルクスクリーンを中心に年一度の個展を開催、同時に、坪田政彦氏とともに泉茂先生の版画を制作しながら、展覧会などでも交流ができたことは、作家としてのキャリアの足掛かりとなっています。
毎年個展を重ねながら、このまま日本でアーチストとして、情熱を持って将来も生き続けていけるのか、50歳代の自分を想像した時に全くビジョンが見出せず。若さと勢いで、ニューヨーク行きを決意しました。

「進化・螺旋の交合II」
アクリル、キャンバス、178x122cm 2005年作
ニューヨーク・ギリシャ総領事館個展 2018年
ギリシャ総領事 コンスタンティン・クートラス閣下

1977年の渡米に先駆け、3年の間、キャリア作りも含め、綿密な準備を行いました。
3年で帰る予定でしたが、実際にニューヨークで生活しながら、ただ学んで帰るのではなく、この地で生き、この地で制作を続けなければ、アーチストとして全う、世界に発信することは出来ないことを、自覚させられ、帰国を止め、永住権取得に踏み切りました。
目まぐるしく変動するアメリカのアートシーンの中、消えゆく画廊や、アーチスト達を尻目に、夢中で過ごすうち滞米も43年が過ぎていきました。

アメリカでの政変、アートシーンの変化は目まぐるしいものがありましたが、国境、時代を超えて、生き続けるアートの普遍性について、荒川修作、河原温、杉本博、ジェフ・クーンズ(シカゴインスティチュート卒業後1977年からニューヨークでの出会い)セオドロス・スタモス、ベルナール・ヴェネ、ケネス・スネルソン達との交友から、アーチストしての生き様など、多くの示唆を受けることできました。ビデオアート創始者ナム・ジュン・パイクとは1981年から2006年没まで、版画制作やプロジェクトとの関わりがあり最も身近な存在として、彼と時代を共有できたことは貴重な経験です。

多民族国家アメリカでは、様々な国のアーチスト、ディーラー、評論家たちとの出会いから、チャンスに恵まれ、アメリカ各都市、フランス、ギリシャ、中国、台湾、日本各都市などで個展を開催、彫刻モニュメントを設置してきました。

中国 広東省 深圳術館 個展
「飛翔−VI 天空昇」3.4m 2003年

「ラフカディオ・ハーンの開かれた精神」
4m 小泉八雲ひ孫、
小泉八雲資料館館長、小泉凡

2003年にはアメリカ現代作家を中国国内に紹介する目的で、ニューヨークで活躍している作家として招待を受け。広東省、深圳美術館で個展「超越境界1973-2003」野田正明展が開催、美術館中庭中央に彫刻「飛翔-VI 天空昇」が、「日中和平友好条約締結25周年記念」として恒久設置されました。

アートの聖地、ギリシャとは20年間の交流の中、アポロ神殿に隣接する、ギリシャ国家直営文化施設、デルフィ・ヨーロッパ文化センターで個展、同彫刻公園に「アポロの鏡」を2005年に設置できたことで(アジア人初)、ギリシャ生まれの、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)プロジェクトが始まりアテネの大学、八雲縁の松江市、生地ラフカダ市、終焉の地、新宿(新宿区小泉八雲記念公園)計4ヶ所に、八雲のひ孫である、小泉凡教授とともに2009年から2019年までの10年がかりでプロジェクトをともにしてきました。
その間、ギリシャ、アメリカ、アイルランド、日本と、文化交流活動を同時に行ってきました。このプロジェクトは、アートと文学の融合として、忘れられた小泉八雲復興、再ブームのきっかけとなりました。

2010年には、マラソン発祥の地、ギリシャ、マラソン市のスタジアムへ
「マラソンの戦い2500周年」として、ギリシャ国家事業で彫刻「ヘルメスの精神」の恒久設置を行い、マラソン市の象徴となっています。毎年開催されるアテネマラソンは、「ヘルメスの精神」がスタート地点です。


「アテネマラソン、スタート地点にモニュメント彫刻が恒久設置されている
2010年「ヘルメスの精神」5m ギリシャ

「創生」 3m
ふくやま美術館 2009 年

郷里、広島県福山市には2000年から、20年がかりで設置してきた公共彫刻が13箇所あり、福山市教育委員会はモニュメントを、アート・文化に向かわせる、次世代育成のモデルとして、来年度から取り組むことが決まりました。
「福山から世界へ」が新たな目標として始動を始めます。
現在デジタル、バーチャルの時代となり、架空世界が現実化の様相を呈しています。
それも現代を象徴する、新たな世界観とも言えますが。
日本を離れ、言語、習慣全てが異なる、他国での活動は、異文化の人々との出会いを通じて、予期せぬビジョン、新たな道が開ける可能性があります。
まず出かけ、行動を起こすことから、予定調和以外の何かが始まります。

野田 正明

@ Expression-110
シルクスクリーンプリント、240x480cm 1976年
A Expression-18-F
シルクスクリーン 55x55cm 1977年
Bチャコールドローイング
左から、「可逆性」150x335cm 1987年
「事前に」180x270cm 1985年
「推進力」156x220cm 1985年
「位 相」150x420cm 1987年
2006年、ふくやま美術館「ニューヨークからのメッセージ野田正明展」会場
C「ラフカディオ・ハーンの開かれた精神」4m 2009年
「日本・ギリシャ友好110周年記念」ギリシャ・アメリカン大学、アテネ
D「ラフカディオ・ハーンの開かれた精神」松江市 宍道湖畔
2.7m  2010年
ギリシャとの姉妹彫刻、夕日がハートの中に入るように設置、現在カップルのパワースポット
E京阪電鉄 宇治駅
ステンドグラス
上段「天空昇」230x630cm 1997年
下段「去来・流転」200x500cm 1997年
F「アポロの鏡」除幕式 2005年
デルフィ・ヨーロッパ文化センター
ディレクター、デルフィ市長、ギリシャ議員など 3.8m


ふくやま美術館 「ニューヨークからのメッセージ、野田正明展」
全ブロンズ(右から)
「リフレックス」50x44x24 cm 2005年
「反芻」52x44x30 cm 2005年
「可能性」 50x49x40cm 2005年
「追跡」 45x44x27cm 2005年
「サブライム」56x37x23cm 2004年
「帰還ーB」 47x40x35cm 2005年

「いまこそ未来」福山市市政施行95周年記念
福山駅前南広場 7.15m  2012年

左から
「無限の未来・小泉八雲終焉の地」2.8m  2019年 新宿区小泉八雲記念公園
「栄光」5.75m  2020年 エフピコアリーナ 福山市総合体育館
Glory「栄光」 工場 大阪の工場での 福山市体育館モニュメント「栄光」の制作完了写真 2020年

野田正明 Masaaki Noda プロフィール
1949年 広島県福山市生まれ
1972年 大阪芸術大学美術学科卒業、在学中に信濃橋画廊で初個展(大阪)
1976年 モダンアート展、大阪市長賞受賞 新鋭作家展「アートナウ(兵庫県立美術館)
1977年 渡米、ニューヨーク・ソーホーに居を構え現在に至る
アート・スチューデンツ・リーグで奨学金を受け81 年まで在籍
1979年 第31回ボストン全米版画協会・買上賞
(マサチューセッツ)
1982年 永住権取得 アメリカ・オランダ友好100 周年記念「国際空中彫刻展」(セントラルパーク、NY) アメリカ初個展を3画廊で開催
(キューギャラリー・NY、ACWLP ギャラリー・NY、ミリアム・パールマンギャラリー・シカゴ) 
1984年 クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド、86、88、94、97、00、03 年出品)
1985年 リュブリアナ国際版画ビエンナーレ(ユーゴスラビア、87、89、91 年出品) 中華民国国際版画ビエンナーレ(中国、89、95、01、04 年出品)
1997年 大型ステンドグラス「飛翔 天空昇、去来流転」(京阪電鉄 宇治駅舎)
2000年 モニュメント彫刻「飛翔II 時空を超えて」(福山市)
2003年 「超越境界1973 − 2003」(深圳美術館・中国)
同時に美術館正面にモニュメント「飛翔V 天空昇」
2005年 個展(デルフィ・ヨーロッパ文化センター・ギリシャ)彫刻公園に「アポロの鏡」設置
2006年 野田正明個展・ニューヨークからのメッセージ(ふくやま美術館)
2009年 モニュメント「創生」設置(ふくやま美術館)モニュメント
「ラフカディオ・ハーンの開かれた精神」設置(ギリシャ・アメリカン大学、アテネ)同時に個展開催
2010年 モニュメント「ヘルメスの精神」設置(マラソン市・ギリシャ)
2011年 「疾風・フラッシュバック」設置(広島市現代術館)
2013年 ニューヨーク・アート・スチューデンツ・リーグ創設137 年の記念本「Time Line」に歴代代表作家の一人として掲載される
2015年 壁面彫刻「光彩」設置、同会場で「ニューヨークで活躍する日系作家展」に出展(ニューヨーク日系人会)
2016年 野田正明の世界・ニューヨークから世界へ(ふくやま美術館)
2017年 春の叙勲・紺綬褒章受章、広島文化賞受賞、アメリカ版画作家協会名誉会員、栄誉賞受賞
2018年 個展「螺旋の交合1995 −2018」(ギリシャ総領事館・NY)ステ ンレス彫刻「上昇」総領事館内に設置
2019年 「新宿・レフカダ友好提携30周年記念」モニュメント「無限の未来−小泉八雲終焉の地」設置(新宿区小泉八雲記念公園)
2020年 モニュメント「無限の未来」設置(在大阪ロシア連邦総領事館)
2020年 モニュメント「栄光」設置(福山市総合体育館)
2021年 個展(高梁市成羽美術館、岡山)予定

現在
オーデュボン・アーティスト協会、ディレクター(版画部門)
ニューヨーク/アリード・アメリカン・アーティスト協会、ディレクター
(平面部門)
ニューヨーク/アメリカン・グラフィック・アーティスト協会、委員、ニューヨーク

 


Greek Embassy「上昇」
ニューヨーク・ギリシャ総領事館に恒久設置された、2018年「上昇」

     


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編集>> 塚本学院校友会 企画広報委員会 発行人>> 福永亮碩